2019年7月、『ファイアーエムブレム』シリーズ最新作『風花雪月』が発売され、好評を博しています。
また、2015年から展開しているトレーディングカードゲーム『ファイアーエムブレム サイファ』や、2017年にスマートフォン向けにリリースされた『ファイアーエムブレム ヒーローズ』では、シリーズ過去作に登場した膨大な人数のキャラクターが、オールスターとして参戦しています。
『サイファ』や『ヒーローズ』、あるいは『風花雪月』で『ファイアーエムブレム』シリーズに初めて触れた方には、過去のシリーズ作品について詳しくわからない、『サイファ』や『ヒーローズ』で登場しているこのキャラは、いったいどの作品のキャラ?といった疑問もあるかと思います。
ここで『ファイアーエムブレム』シリーズの作品たちを、時代ごとに3回に分けて、新たに興味が出た方にもオススメできる作品の紹介などを記していこうと思います。
本稿では、シリーズ中期となる00年代の『ファイアーエムブレム』について紹介したいと思います。
(『新・紋章の謎』については 2010年 の作品ですが、区切りの都合上、00年代のカテゴリにまとめて本稿で取り扱います)
90年代 FE を紹介した前回の記事はこちら。
10年代 FE を紹介した次回の記事はこちら。
シリーズにおける 90年代 → 00年代 の変化について
当時、最も大きな変化として話題となったのが、『トラキア776』までのディレクターを務めた『加賀 昭三 氏』の退職です。
『聖戦の系譜』や『トラキア776』で見せたハードな作風は鳴りを潜め、『封印の剣』以降の作風の変化、そして『加賀 昭三 氏』本人の手掛けたゲーム『ティアリングサーガ』や『ベルウィックサーガ』の登場など、90年代と00年代を境として、シリーズのファンが『加賀派』と『非加賀派』に分断された傾向にあった時代でもあります。
(もちろん、どちらも好きという方も多数いらっしゃると思います。が、当時のシリーズファンの様子を見ていて、こういった対立の傾向が強く見受けられたのも事実かと思います)
エレブ大陸 編
ファイアーエムブレム 封印の剣(2002年 GBA)
主な登場人物(『ヒーローズ』参戦済みのキャラ)
- 主人公:ロイ
- ヒロイン:リリーナ
- 孤高の剣士:ルトガー
- 魔道軍将:セシリア
- 私は美しい:ナーシェン
- 回転王:ゼフィール
- 暗闇の巫女:イドゥン
概要紹介
前述の『非加賀』体制のもと、ハードを携帯機である GBA に移した作品です。
GBA という、どちらかと言うと子ども受けの良いハードでの発売もあり、ストーリー展開は従来の作品よりわかりやすく子どもにも伝えやすい形となり、実際に外伝作品『覇者の剣』が少年ジャンプ系列のマンガ雑誌で連載されたりもしました。
システムは『トラキア776』をベースにしつつ遊びやすく改修され、さらにキャラクターの魅力を引き出す『支援会話』システムも本作から導入され、以後00年代作品の土台をこの時点で確立した作品でもあります。
ストーリー面は90年代よりややライト寄りな描写になっている作品ですが、キャラクターは初代『暗黒竜と光の剣』のセルフオマージュとも言えるような、伝統を守ったキャラ造形が多く、システム面でもシリーズの魅力を壊さずに受け継ぎつつ、後続の作品と合わせて間口を広げていく展開となっているため、個人的には『加賀 昭三 氏』の欠けた状態でも、非常に上手くシリーズの大事な箇所をつなぎ留めた作品だな、と思っています。
地味なところで操作性も非常に良い作品で、いま遊んでも違和感なく楽しめると思いますが、この辺りの本作の良さは後の『烈火の剣』や『聖魔の光石』にも受け継がれていおり、そちらの方がより難易度がマイルドな取っつきやすい作品となっているため、本作は『烈火の剣』や『聖魔の光石』では物足りない、という人向けかも知れません。
ファイアーエムブレム 烈火の剣(2003年 GBA)
主な登場人物(『ヒーローズ』参戦済みのキャラ)
- 主人公3人:リン・エリウッド・ヘクトル
- ヒロイン:ニニアン
- 黒い牙:ロイド・ライナス・ウルスラ・ラガルト・ジャファル・ニノ
概要紹介
前作『封印の剣』の過去を舞台とし、『ロイ』達の親世代の活躍を描いた作品です。
『封印の剣』と世界観を共有する作品ですが、物語はそれぞれで完結しているため、どちらから遊んでも楽しめる内容となっています。
物語最初の手厚いチュートリアルとなる『リン編』、本編とも言える『エリウッド編』、エリウッド編をベースとしつつ別視点の出来事も描かれる『ヘクトル編』、さらにそれぞれに『ノーマル』と『ハード』の難易度選択があり、初めての方からやり込み派まで、非常に幅広い層の楽しめる作品となっています。
また、後の作品で導入された『マイユニット』の原型とも言える『軍師』も登場し、上記3名と合わせて主人公が複数人体制となることにより、ストーリー上の会話が仲間同士で弾むようになったのも大きな特徴です。
システム面は前作『封印の剣』をほぼそのまま踏襲していますが、クラスや武器の格差などバランスが是正されており、特に本作からは「成長率が低くて育てづらい」といったキャラ格差が大きく緩和されているため、以後のシリーズは自分の好きなキャラクターを育てて遊びやすいゲーム性となっています。
初めての方でも遊びやすく、かつ遊び応えもある、非常にバランスの良い作品となっており、00年代の中でも特に人気の高い作品の一つです。
マギ・ヴァル大陸 編
ファイアーエムブレム 聖魔の光石(2004年 GBA)
主な登場人物(『ヒーローズ』参戦済みのキャラ)
- 双子の主人公:エイリーク・エフラム
- 双子の親友:リオン
- 強いジェイガン:ゼト
- 実はいい人:ヒーニアス
- 正義の聖王女:ラーチェル
- 見習い兵士:アメリア
概要紹介
舞台を『マギ・ヴァル大陸』へ移した、他作とのつながりを持たない単独作品です。
この作品の最大の特徴は、『ファイアーエムブレム外伝』のシステムを受け継いだ、ワールドマップを自由に移動でき、フリーマップで好きなだけ育成が出来るシステムかと思います。
クラスチェンジ分岐を基本システムとして初めて取り込んだ作品でもあり、下級職のさらに下の『見習いクラス』が『外伝』以来の登場となるなど、『外伝』特有のキャラ育成を重視したシステムが多く取り込まれており、当時としては独自性の強い作品でしたが、本作があったからこそ『覚醒』以降のカジュアル路線につながった、とも言えるかも知れません。
『外伝』と違って、基本となる戦闘システムは『封印の剣』『烈火の剣』を踏襲しており、また「死んだ仲間は生き返らない」という所謂クラシック FE の伝統も受け継いではいますが、自由に育成可能なことも含めて難易度はかなり低めになっており、プレイ対象として初心者を強く意識した作りとなっていることが伺えます。
00年代以前のクラシック FE と、『覚醒』以降のカジュアル FE、両者の特徴を併せ持った架け橋のような作品と言えるため、本作を起点に新旧両方の FE に触れてみるのも良いかも知れません。
テリウス大陸 編
ファイアーエムブレム 蒼炎の軌跡(2005年 GC)
主な登場人物(『ヒーローズ』参戦済みのキャラ)
- 主人公:アイク
- アイクの父、傭兵団長:グレイル
- アイクの妹、メダリオンの保持者:ミスト
- 亡国の王女:エリンシア
- 鷹王:ティバーン
- 鴉王:ネサラ
- 民家の恐怖:漆黒の騎士
- 美の探究者:オリヴァー
概要紹介
携帯型ゲーム機での3作の展開を経て、久しぶりに据置型ゲーム機に戻ってきた作品です。
ハードの変化もあって、グラフィックはシリーズ初の 3D となり、一部演出にはプリレンダムービーやキャラクターボイスも採用されています。
発売前は、ムービーシーンでいきなり「お兄ちゃーん!」と呼びかける妹キャラや、獣人種族『ラグズ』に属するネコミミキャラの存在など、色んな意味で不安視されていた作品でしたが…、人気主人公『アイク』の成長物語を熱く描きつつ、戦記物としても魅力的な内容となっており、良い意味で予想を裏切るような結果となりました。
グラフィックは 3D 化されたものの、システム面は GBA 時代のものを基本的に踏襲しており、引き続き違和感無く遊びやすい内容となっています。
また、難易度選択が『ノーマル・ハード・マニアック』の3段階と従来よりも多様化しており、『ノーマル』がシリーズ初心者向けの実質イージーモード、『ハード』は旧来のシリーズ作に近い経験者向けの難易度、という形で間口を広げており、この難易度設定の方針は、以後のシリーズ作品にも受け継がれていくことになります。
『烈火の剣』と同様に00年代の中でも特に完成度の高い作品で、難易度も自分好みに選べるため、非常にオススメ出来る内容ではあるのですが、ゲームキューブソフトの出荷数の少なさによる価格高騰の影響を受けており、現実問題としてソフトの入手難度が高い点については注意が必要です。
ファイアーエムブレム 暁の女神(2007年 Wii)
主な登場人物(『ヒーローズ』参戦済みのキャラ)
- 第一部主人公:ミカヤ
- ミカヤの守り手:サザ
- ベグニオン皇帝:サナキ
- 神使親衛隊隊長:シグルーン
- 狼女王:ニケ
- 獅子王:カイネギス
概要紹介
やや伏線を多く残して終わった『蒼炎の軌跡』の、直接的な続編になります。
物語は『蒼炎の軌跡』の3年後、前作の敵国であり敗戦国となった『デイン王国』から物語は始まり、第二部、第三部、と『テリウス大陸』の各国へと視点を移して、その後の様子が描かれる群像劇方式で進行していきます。
引き続き 3D で描かれるグラフィック面は、前作からさらに大きく進化しており、戦争における大軍同士の激突を描いたムービーシーンや、豊富なモーションを見せてくれるようになった戦闘シーンなどは、特に驚きを持って迎えられました。
視点を各国に移して描かれるストーリーは、シリーズの中でも最大級のボリュームを誇っており、メインストーリーのステージ数は40を超え、それでいて様々なシチュエーションやギミックが登場するなど、プレイヤーを飽きさせない作りとなっています。
ストーリーのボリュームに合わせて、『上級職』のさらに上の『最上級職』が『外伝』以来の登場となり、終盤はゲームバランスが大味になるといった声も聞かれますが、強力な『奥義』が飛び交う非常に豪華絢爛なバトルを見せてくれます。
『蒼炎の軌跡』から続く物語の完結として、非常に壮大で豪華な作品ですが、当然ながら前作の流れを受けての本作なので、先に『蒼炎の軌跡』をプレイすることをオススメします。
新・アカネイア大陸 編
ファイアーエムブレム 新・暗黒竜と光の剣(2008年 DS)
主な登場人物(『ヒーローズ』参戦済みのキャラ)
- 異邦の剣士:アテナ
概要紹介
シリーズの原点である『暗黒竜と光の剣』のリメイク作品となります。
SFC でリメイクされていた『紋章の謎』とは異なり、続編となる第二部は収録されていませんが、『紋章の謎』第一部のリメイクにおいて省かれたエピソードや削除されてしまったキャラも、本作には収録されています。
『兵種変更システム』によって、各キャラの兵種をある程度は自由に変更できるのが特徴ですが、『封印の剣』~『暁の女神』で採用されていた『支援会話システム』や『救出システム』は採用されないなど、原点らしく全体的に簡略化された内容となっています。
またストーリー面は、テキストが FC 時代の原作を崩さない内容となっており、『支援会話』の代わりに章の合間や新しく仲間になったキャラとの会話が増えるなどしていますが、全体的に非常にあっさりと進行していきます。
リメイクにおける追加要素として、新規キャラが仲間にできる外伝ステージをプレイすることが出来ますが、その条件は「一定数以上の戦死者を出す」という、言わば外伝ステージが初心者救済の意味合いとなっており、パーフェクトプレイを目指すと外伝ステージをプレイ出来ないという点について、批判の声が多くなりました。
名作揃いの『ファイアーエムブレム』シリーズの中では、比較的評価の低い本作ですが、あくまでシリーズの中では厳しい目で見られているというだけで、SRPG としては十分に遊べるレベルだと個人的には思います。
シリーズの原点を手軽に遊べるタイトルであるため、まず本作から手を出してみるのも悪くない選択かと思います。
ファイアーエムブレム 新・紋章の謎 ~光と影の英雄~(2010年 DS)
主な登場人物(『ヒーローズ』参戦済みのキャラ)
- 相棒軍師:カタリナ
- 暗殺者:クライネ・ローロー
概要紹介
『新・暗黒竜と光の剣』に続いて、『紋章の謎』の第二部が単独作品としてリメイクされました。
基本システムはやはり前作の『新・暗黒竜と光の剣』を踏襲しているのですが、前作の不評を受けてか、随所に遊びやすくするための工夫が施されています。
次作『覚醒』以降のシリーズ作品でもお馴染みの、プレイヤーの分身キャラを作れる『マイユニット』や、HP 0になっても死亡扱いにならない『カジュアルモード』などは本作から導入され、「手強いシミュレーション」のとっつきづらさの緩和に大きく貢献しています。
また、原作シナリオの主役を担う『マルス』に対して、追加シナリオ部分の主人公を『マイユニット』が担当することで、原作の雰囲気を損なうことなく、本作独自のストーリー展開やキャラクターの掘り下げに成功しています。
また、初代『暗黒竜と光の剣』で登場しながらも『紋章の謎』で登場出来なかったキャラクターや、『新・暗黒竜と光の剣』の追加キャラクターも、本作では全員参戦し、さらにサテラビュー配信限定の幻の作品『アカネイア戦記』のキャラクターまで登場、『新・アカネイア戦記』としてエピソードがゲーム中のおまけコンテンツとして収録されるなど、まさに『アカネイア大陸 編』の総決算とも言える内容になっています。
『暁の女神』と同様に続編タイトルである本作ですが、前作『暗黒竜と光の剣』がそこまでストーリー性の濃い作品ではないことと、『人物相関図』などで前作の内容も比較的カバーしやすいため、本作からプレイすることも十分オススメ出来ます。
『カジュアルモード』や『マイユニット』など、『聖魔の光石』と同様に本作もまた、クラシック FE とカジュアル FE の狭間に位置するタイトルと言えるため、どちらも興味のある方は本作から始めてみるのも良いのではないでしょうか。
この時代の作品で、初めてプレイするのにオススメ
旧来の作品に近い、クラシック寄りの FE を楽しみたい
- 烈火の剣
- 蒼炎の軌跡
どちらも難易度選択の幅が広く、SRPG が苦手な人から、やりごたえを求める人まで、幅広くクラシック FE を楽しめます。
『烈火の剣』を遊べるハード
- GBA
- DS(GBA ソフト互換起動、DSi シリーズは不可)
- WiiU(バーチャルコンソール)
『蒼炎の軌跡』を遊べるハード
- GC
- Wii(GC ソフト互換起動)
「手強いシミュレーション」よりも、カジュアル寄りの FE を楽しみたい
- 聖魔の光石
- 新・紋章の謎
特徴的なシステムが、次代の FE に継承されている2作です。90年代 FE よりも、どちらかというと10年代 FE に近い楽しみ方をしたい方は、この2作がオススメです。
『聖魔の光石』を遊べるハード
- GBA
- DS(GBA ソフト互換起動、ただし DSi シリーズは不可)
- WiiU(バーチャルコンソール)
『新・紋章の謎』を遊べるハード
- DS
- 3DS(DS ソフト互換起動)
3DS で主に展開される10年代 FE、そしてややマイナーなスピンオフ作品についても紹介する、次回の記事はこちら。