2019年7月、『ファイアーエムブレム』シリーズ最新作『風花雪月』が発売され、好評を博しています。
また、2015年から展開しているトレーディングカードゲーム『ファイアーエムブレム サイファ』や、2017年にスマートフォン向けにリリースされた『ファイアーエムブレム ヒーローズ』では、シリーズ過去作に登場した膨大な人数のキャラクターが、オールスターとして参戦しています。
『サイファ』や『ヒーローズ』、あるいは『風花雪月』で『ファイアーエムブレム』シリーズに初めて触れた方には、過去のシリーズ作品について詳しくわからない、『サイファ』や『ヒーローズ』で登場しているこのキャラは、いったいどの作品のキャラ?といった疑問もあるかと思います。
ここで『ファイアーエムブレム』シリーズの作品たちを、時代ごとに3回に分けて、新たに興味が出た方にもオススメできる作品の紹介などを記していこうと思います。
本稿では、シリーズで最も新しい時期となる10年代の『ファイアーエムブレム』、そしてシリーズのスピンオフとなる関連作品について紹介したいと思います。
90年代 FE を紹介した前々回の記事はこちら。
00年代 FE を紹介した前回の記事はこちら。
目次
シリーズにおける 00年代 → 10年代 の変化について
シリーズの大きなターニングポイントとして、前回紹介した『加賀 昭三 氏』の脱退が第1に挙げられますが、第2のターニングポイントは、2012年に発売された『ファイアーエムブレム 覚醒』と言えると思います。
『マイユニット』と『カジュアルモード』はシリーズの伝統となり、キャラクターボイスの本格導入、『聖戦の系譜』よりもずっとライトな形で恋愛を楽しめる『結婚システム』、日常会話のようなものまで見ることが出来る膨大な組み合わせの『支援会話』…。
『覚醒』以降のシリーズ作品は、いわゆる「キャラゲー」的な見られ方をすることが多くなり、旧来のファンからは激しい反発もありましたが、その一方で売り上げは国内外ともに急上昇し、「『覚醒』が売れなければ、シリーズ打ち切り」という危機的状況から一転、世界的にも名の知れた SRPG シリーズとして、大きな躍進を果たしました。
その後も『ファイアーエムブレム』シリーズの展開は、さらに大きな変化を続けており、シリーズの今後がどうなっていくか楽しみですね。
ファイアーエムブレム 覚醒(2012年 3DS)
主な登場人物(『ヒーローズ』参戦済みのキャラ)
- 主人公:クロム
- もう一人の主人公:ルフレ(マイユニット)
- 未来を知る者:ルキナ
- 執念の呪術師:サーリャ
- 天才天馬騎士:ティアモ
- よく血が騒ぐ:ウード
概要紹介
前述の通り、シリーズに大きな変化をもたらした作品です。
「本作が売れなければシリーズ終了」と言われていた作品であり、その結果として開発陣に後悔が無いように、入れたい要素をとにかく詰め込んだ、と言われている作品です。
『新・紋章の謎』から『マイユニット』と『カジュアルモード』を継続、『外伝』や『聖魔の光石』のようなフリーマップ形式による自由な経験値稼ぎ、『聖戦の系譜』の『結婚システム』の復活、『封印の剣』から伝統の『支援会話』は用意された分を制限なく発生させることが出来るようになり、組み合わせの数も膨大に…。
さらにキャラクターボイスの本格採用や、二人一組でともに戦いつつ友好度を上げられる『ダブル』システム、プレイヤーの分身『マイユニット』と好きなキャラを結婚させることが出来るなど、『暁の女神』までに見られた戦記物のストーリー展開よりも、美男美女揃いのキャラたちと仲を深めていく、という要素を期待するプレイヤーが、本作から大きく増えることとなりました。
よりライトな層を取り込むことに成功した本作は、前作『新・紋章の謎』の2倍近くの国内売り上げを記録し、さらに海外でも大ヒットとなった結果、世界中で一目置かれる、新しい「シリーズの顔」とも言える作品となりました。
一方で、旧作と比べて戦争を背景とした描写が弱いストーリー展開やキャラ設定、また『ダブル』による運要素の促進と大味なステージ構成、追加配信コンテンツによるやや強引な歴代キャラの出演など、従来のファンの一部からは批判の声も多く挙がった作品でもあります。
『覚醒』以前と以後で大きく印象を異にする人も多い、しかしシリーズの存続を決定付けた救世主でもある本作、『ファイアーエムブレム』として見ると大味な部分も目立ちますが、育成要素やキャラとの交流という面では、旧来のシリーズには無いボリュームを誇るため、そういったライト寄りな要素を楽しみたい方にはオススメできる作品です。
ファイアーエムブレム if(2015年 3DS)
主な登場人物(『ヒーローズ』参戦済みのキャラ)
- 主人公:カムイ(マイユニット)
- 男気の歌姫:アクア
- 白夜のきょうだい:リョウマ・ヒノカ・タクミ・サクラ
- 暗夜のきょうだい:マークス・カミラ・レオン・エリーゼ
概要紹介
『覚醒』とともに近年の FE を代表する作品として知られている『if』は、『白夜王国』と『暗夜王国』という2パッケージに分かれた販売が行われたタイトルです。
和風の文化を持つ『白夜王国』と、西洋風の文化を持つ『暗夜王国』、主人公となる『マイユニット』はどちらに属することにするかを選択することになりますが、両方のルートを遊ぶために2パッケージを買う必要はなく、選ばなかったルートは追加配信コンテンツとして安値でダウンロード購入することが可能です。
この分割による最大の特徴は、『白夜王国』がフリーマップによる自由な育成が可能、『暗夜王国』がフリーマップ利用禁止の高難度ステージ、と大きくコンセプトが分かれており、『白夜王国』は前作『覚醒』に近い楽しみ方、『暗夜王国』は旧来の FE に近い楽しみ方、が可能となっている点です。
『覚醒』で批判の多かった「大味な戦術シミュレーション部分」も、『暗夜王国』ではディープなファンをも唸らせるマップが多数存在するようになり、『ダブル』は一長一短の『攻陣・防陣』へと変更、さらに多種多様な兵種とスキルの存在などにより、非常に「手強いシミュレーション」としても楽しむことが可能となっています。
一方でストーリー面の薄さについてはあまり改善されず、さらにキャラクターを自室へ呼び込んでタッチ出来るといったインパクトのある遊び要素の存在もあり、『覚醒』から引き続き拒否反応を示す旧来のファンも少なくありません。
重厚な物語を期待するプレイヤーには賛否両論あるかも知れませんが、『覚醒』から改善された要素も多く、ライトなファンに向けた『白夜王国』と、コアなファンに向けた『暗夜王国』、どちらのプレイヤーも満足させられる本作は、戦術シミュレーションとしては非常にオススメ出来る作品です。
ファイアーエムブレム Echoes もうひとりの英雄王(2017年 3DS)
主な登場人物(『ヒーローズ』参戦済みのキャラ)
- アルムのためなら:エフィ
- 高慢の王子:ベルクト
概要紹介
シリーズの中でも取り分け知名度の低かった『外伝』の、満を持してのリメイク作です。
キャラクターのビジュアルは『暗黒竜と光の剣』から『紋章の謎』への変化のように、あるいはそれ以上に大きくリファインされており、新しくもどこか懐かしい正統派ファンタジーの世界観が描かれています。
旧作のリメイクということもあってか、『覚醒』や『if』と比べるとキャラクターの押しもやや控えめで、落ち着いた雰囲気や『アルム』と『セリカ』のダブル主人公によるしっかりとしたストーリーラインも相まって、近年の作品の中でも、旧来のファンからの評価が高い印象があります。
ただしゲーム性は、異端作『外伝』の持つ独自性をしっかりと引き継いでいるため、『装備』の概念が他のシリーズ作と全く異なったり、ゲームバランスが『覚醒』どころじゃないぐらい非常に大味だったりと、『ファイアーエムブレム』の伝統的な作りとは大きく異なる要素も含んだ作品です。
『ファイアーエムブレム』シリーズの中では独特な立ち位置の作品ですが、難しさや複雑さは無く非常に取っつきやすい内容でもあるため、特にこだわり無く懐かしい感じのファンタジー SRPG を楽しみたい、という方なら十分楽しめるかと思います。
この時代の作品で、今プレイするのにオススメ
自由なキャラクター育成を重視して、手軽に楽しみたい
- 覚醒
- if 白夜王国
- Echoes
戦術シミュレーションゲームとしての、やり応えを感じたい
- if 暗夜王国
上記すべて『ニンテンドー 3DS』系列のハードで遊ぶことが可能です。
この世代の作品はまだまだ新しく、どの作品も古さに起因するやりづらさ等は特に無いため、キャラや雰囲気の好みに合わせて手に取ってみるのも良いかと思います。
その他、スピンオフ作品群の一部をご紹介
OVA版ファイアーエムブレム紋章の謎
『紋章の謎』の本編をなぞった OVA 作品です。
全2巻という、第一部の途中で早々に打ち切られてしまった作品ですが、マルスに『緑川 光』さん、ナバールに『子安 武人』さん、オグマに『小杉 十郎太』さん、といった本作でのキャスティングの一部は、『ヒーローズ』等の現在のメディア展開にも引き継がれています。
BS ファイアーエムブレム アカネイア戦記
SFC 末期に展開されたプラットフォーム『サテラビュー』を用いて配信された、『紋章の謎』のスピンオフ作品です。
現在プレイすることは不可能ですが、『新・紋章の謎』にてリメイクされた内容を遊ぶことが出来ます。
ファイアーエムブレムTCG
現在も展開が続いている『サイファ』よりずっと前に、実は『ファイアーエムブレム』の TCG が存在していました。
『聖戦の系譜』のスピンオフから始まり、『紋章の謎』が参戦したところで展開は終了。
黒歴史的な存在になりつつありますが、旧作でバラついていたキャラクターのイメージが『小屋 勝義 氏』の統一感のあるイラストによってまとめられ、ビジュアル面では今でも意外に大きな影響を与えている作品かと思います。
ファイアーエムブレム 覇者の剣
『ファイアーエムブレム』のコミカライズやノベライズは多数存在し、『箱田 真紀 先生』による『暗黒竜と光の剣』や、『大沢 美月 先生』による『聖戦の系譜』などが有名ですが、ゲーム版『封印の剣』と世界観を共有しつつ、オリジナルストーリーを展開した外伝作品として『覇者の剣』は特別な存在です。
ゲーム本編と時間軸を同じくしつつ、全く異なった主人公『アル』の物語を描き、ゲーム版『封印の剣』には『覇者の剣』のキャラの名を冠した装備が登場し、漫画版『覇者の剣』では『封印の剣』本編のエピソードと何度かクロスすることになります。
本作のオリジナルキャラクターは TCG『サイファ』にも参戦しており、作画を担当された『山田 孝太郎 先生』は『サイファ』や『ヒーローズ』でも多数のイラストを手掛けられるなど、現在のシリーズ展開ともつながりの強い作品でもあるため、スピンオフ作品と言えども、今後の展開にも期待したいところです。
ファイアーエムブレム サイファ
現在展開されているトレーディングカードゲームです。
歴代キャラクターのオールスターバトルとなっており、シリーズのメインと言える作品は全て参戦済み、歴代の細かいキャラクターやネタまで拾いつつ、一線級の絵師さん達による美麗イラストによってシリーズ作品の魅力が引き出されています。
ゲームシステムも『前衛と後衛』や『射程』の概念など、いかにも『ファイアーエムブレム』らしい要素に富んでおり、全国各地で体験会などのイベントも多数行われているため、シリーズのファンの方は一度足を踏み入れてみるのも良いかも知れません。
幻影異聞録♯FE
『ファイアーエムブレム』シリーズが、『アトラス』の『女神転生』シリーズと悪魔合体を果たした作品です。
作風は『ペルソナ』シリーズに近く、本作オリジナルキャラクターに、FE の歴代キャラクターの化身が憑依する、といった設定になります。
キワモノなコラボ企画に見えますが、爽やかで嫌味の無いキャラクターたちや、わかりやすくも奥が深いコマンド選択型のバトルシステムなど、RPG としての完成度は非常に高いです。
2020年1月、『幻影異聞録♯FE Encore』として、『Nintendo Switch』へのリバイバルが決定しました!
ファイアーエムブレム無双
『ファイアーエムブレム』シリーズが、『コーエーテクモゲームス』の『無双』シリーズとコラボを果たした作品です。
『無双』シリーズの魅力である「一騎当千の爽快感」と、『ファイアーエムブレム』シリーズの魅力である「盤面上の各ユニットに指示を出して動かす戦術性」が両立されており、こちらも評価の高いコラボ作品です。
『暗黒竜と光の剣』『覚醒』『if』にほぼ限定された歴代キャラの選出には批判の声も多くありましたが、海外も含めてそこそこの売り上げを達成したようなので、いかにも無双系が似合う『ヘクトル』や『エフラム』、『アイク』たちの参戦する『続編』に期待したいところです。