ゲーム雑記です。
気付けばすっかり生誕から20年以上が経過していた『テイルズ』シリーズの歴史について振り返りながら、『藤島テイルズ』『いのまたテイルズ』という二分化について語っていきます。
(自分は『グレイセス』までしかプレイしていないため、そこまでの話が中心となります。ご了承ください)
目次
『藤島テイルズ』と『いのまたテイルズ』の定義
この2つをどういう風に分類するか、定義は人によるかと思います。
「いや、イラストレーターが誰かなんて一目瞭然じゃん」と思われるかも知れませんが、本稿では単純に担当イラストレーターで分けるわけではなく、『テイルズシリーズ』における『デスティニー2』と『シンフォニア』以降の開発チームを1つの基準とします。
具体的なスタッフを見比べたわけではないですが、『エターニア』リリース後の『テイルズ』シリーズのメインの開発ラインは、『いのまた むつみ』先生がイラストを手掛けた作品を担当するチームと、『藤島 康介』先生がイラストを手掛けた作品を担当するチーム、主に2ラインが走っていたと思われます。
(当時の『2ちゃんねる』などでは、『D2チーム』『Sチーム』と呼んで区別されていた記憶があります)
つまり本稿では、00年代当時の『テイルズ』のゲーム作品としての傾向を、開発チームから大きく2つ(とその他)に分類しようということです。
具体的には、以下のような分類とします。
藤島テイルズ
- テイルズ オブ シンフォニア(2003年)
- テイルズ オブ ジ アビス(2005年)
- テイルズ オブ ヴェスペリア(2008年)
いのまたテイルズ
- テイルズ オブ デスティニー2(2002年)
- テイルズ オブ リバース(2004年)
- PS2リメイク版 テイルズ オブ デスティニー(2006年)
- テイルズ オブ グレイセス(2009年)
その他、どちらにも含まれない作品
- 初期3作品(ファンタジア、PS版デスティニー、エターニア)
- テイルズ オブ レジェンディア
- DS3作品(テンペスト、イノセンス、ハーツ)
- その他、ラタトスク、なりダン系、マイソロ系、ファンダム系、など
やや乱暴ではありますが、例えば『イノセンス』の場合は、『いのまたむつみ』先生がイラストを手掛けておられるものの、開発チーム的な意味では『なりきりダンジョン系(2,3)』や『レディアントマイソロジー系』に近い分類となるため、『その他』に含まれるものとしています。
(ただ『ハーツ』は『いのまたテイルズ』に片足突っ込んでる、ぐらいの扱いでも良いかも知れない…)
『藤島テイルズ』の傾向
ざっくり言うと「ストーリーは凝って、システムはシンプルでわかりやすい」
『エターニア』で完成されたゲームデザインを、そのまま『進化』させたような、安定感のある作品、という印象です。
ストーリー
『藤島テイルズ』の人気を支えている部分だと思います。
特に、各キャラクターに凝ったバックグラウンドの多い『シンフォニア』と、主人公まわりのストーリーにインパクトのある『アビス』は、両作のシナリオを担当された『実弥島 巧』氏の名を、シリーズファンに知らしめる形になりました。
専門用語が多数登場し、時には陰鬱な描写があったりと、シリアスな深夜アニメのようなノリで進んでいきます。
(シナリオ担当が変わった『ヴェスペリア』は、やや毛色が異なります)
キャラクター
ストーリーの人気もあってか、公式の人気投票でも上位常連のキャラクターが多いです。
この傾向から、個人的な印象として女性ファンからの人気が高いような気がしています。
具体的なキャラクターの特徴としては、『シンフォニア』の『ゼロス』、『アビス』の『ジェイド』、『ヴェスペリア』の『レイヴン』のように、「裏の顔を持つ飄々とした男性キャラ」が登場することが多く、どのキャラも高い人気を誇っています。
また高い人気の一方で、作中での行動や脚本内での扱いから、『アビス』のキャラ全般や『ヴェスペリア』の『ユーリ』など、賛否両論の激しく別れるキャラクターも多いです。
グラフィック
『シンフォニア』の段階から 3D を採用しており、ゲームシステムや演出に影響を与えています。
また『ヴェスペリア』はシリーズ初の HD 作品であり、トゥーン調の日本アニメらしいグラフィックは、とてもテイルズにマッチしているのではないかな、と個人的に思っています。
戦闘システム
グラフィックに合わせて戦闘の舞台も 3D になったものの、『エターニア』の流れをそのまま踏襲して進歩させています。
特に『シンフォニア』は、独自要素もあるものの、おおよそ『エターニア』以前のシステムをそのまま 3D 空間に落とし込んだような形です。
『アビス』ではフリーランが登場し、『ヴェスペリア』ではフェイタルストライク(一撃必殺システム)の採用やスキルの多様化により、さらに爽快感を追求した作りになりました。
ただし『シンフォニア』→『アビス』→『ヴェスペリア』と順当に進化して調整されているため、今から『シンフォニア』や『アビス』をプレイする場合は、やや古臭い印象を受けるかも知れません。
『いのまたテイルズ』の傾向
『藤島テイルズ』とは逆に「ストーリーはわかりやすくシンプル、システムは作り込まれている」
完成された『エターニア』の流れから少し『変化』した、斬新で挑戦的なゲームデザインが多いです。
ストーリー
わかりやすい勧善懲悪の流れとなる作品が多いです。
純粋で真っ直ぐな主人公による王道ストーリーは、時に「キャラクターの思慮が浅い」と批判されることもありますが、昔ながらの RPG のような安心感と懐かしさも感じられます。
こちらも専門用語は様々登場しますが、良くも悪くも、あまり用語を意識せずともだいたいわかるストーリーとなっています。
キャラクター
『藤島テイルズ』のキャラクターが人気投票上位を多くキープするということは、つまり『いのまたテイルズ』のキャラクターは、あまり上位に顔を連ねることがありません。
もちろんキャラクターに魅力が無いわけではなく、「ひょうきんな兄貴キャラ」や「落ち着いた大人のキャラ」など、わかりやすいキャラクターが多く、家族のようなパーティの仲の良さは見ていて微笑ましいです。
個人的には、『デスティニー2』の『ロニ』や『リバース』の『ティトレイ』のような、ムードメーカー的な兄貴キャラが、見ていて楽しくてとても好きです。
(『ティトレイ』は一応、家族構成的には弟キャラだけれど…)
グラフィック
『グレイセス』は 3D ですが、『デスティニー(リメイク版)』までは PS2 時代でも 2D を貫いています。
『エターニア』までの時代のノウハウもあってか、戦闘シーンのアクションなどもよく動くドット絵で派手に演出されています。
また 2D という誤魔化しの効きやすい演出の関係上、イベントシーンは 3D 作品と比べてテンポ良く、悪く言えばアッサリと進みます。
戦闘システム
とにかく『いのまたテイルズ』を語る上で欠かせないのが、この戦闘システム。
それぞれ具体的に語るのは別の機会にしますが、1作ごとにシステムに大きな変化がもたらされています。
特に『デスティニー2』と『リバース』の2作は、『エターニア』の「戦場を縦横無尽に駆け巡るアクション」を重視した戦闘とは打って変わって「押すか引くかという立ち回りの判断力」や「仲間との連携」が重視される形になり、中毒性の高い戦闘システムは多くのファンを虜にしました。
ただし『リバース』の難解さには賛否両論あったためか、『デスティニー(リメイク版)』以降はコンボを重視し爽快感も兼ね備えた方向性へと舵を切り、次作『グレイセス』ではこれが功を奏して、3D テイルズ最高の戦闘システムと評されるほどに広く支持を得ています。
このような戦闘システムのストイックな魅力もあって、個人的には『藤島テイルズ』と比べて男性からの支持が厚い印象があります。
またゲームシステム面だけでなく、「味方 AI の賢さ」や「驚異的なロード時間の短さ」など、作り込みにこだわりを感じる部分が多いです。
これらの作品のバトルプログラムやバトルデザインを手掛けたスタッフとして『有働 龍郎』氏の名が知られており、「彼が開発に参加しているか否か」を購入の判断材料にするファンも少なからず存在します。
(ちなみに『有働 龍郎』氏は、PS版『ファンタジア』ではミニゲーム『Groovy アーチェ』を、『エターニア』ではバトルプログラムを担当されたそうで、初期作しか知らない方でも、作り込みにはピンとくるかと思います)
『藤島テイルズ』と『いのまたテイルズ』、こうして見比べてみると、単にイラストレーターが異なるだけではない、とても対照的な作品群となっていることがわかります。
同シリーズの中でも「藤島テイルズは当たりが多いよね」というファンもいれば「いのまたテイルズだけは買う」というファンもおり、良くも悪くも支持層の違いが感じ取れる場面もあります。
しかし、それぞれの作品は長所がしっかり作り込まれており、それぞれが多くの人々を魅了してきたというのは紛れもない事実です。
また『藤島テイルズ』における『実弥島 巧』氏、『いのまたテイルズ』における『有働 龍郎』氏のように、固定ファンを生み出すスタッフの存在というのも、ファンの声の熱さを感じ取られて、なんだか面白いなと思います。
これらの『テイルズ』作品の中で、やったことのない作品のある方は、自分の好みに従ってどれかをプレイしてみるのも、良いのではないでしょうか。
↑同時代に発売され、ともに名作と呼び声が高い、『ヴェスペリア』と『グレイセス』の主人公『ユーリ』と『アスベル』。『藤島テイルズ』と『いのまたテイルズ』の違いを象徴するかのような、対照的な2人です。
このあと1作ずつ順番に軽く取り上げて、本当に振り返っていくことで、今回と合わせて前後編にしようか、と思っていたのだけれど…。
なんか既に、それぞれの作品についてだいぶ詳しく言及してしまった気がするので、書くかどうかは未定…。